大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎簡易裁判所 昭和61年(ハ)742号・昭61年(ハ)741号 判決

(抄録)

「一 本件契約の成否について

1 Yらの署名、捺印(但し、Y2については、Y1が代理)が真正であることは当事者間に争いがないので、全部真正に成立したものと推認すべき甲一、四号証と、成立に争いがない乙三、二号証は、証人Iの証言並びにYらの供述により、Yら宅において複写により同時に作成された事実が明白である。従って、甲一号証と乙三号証、甲四号証と乙二号証は各一対のものとして、その記載内容は当然同一であるべきであるが、右甲号各証の記載中には、右乙号各証に記載されていない記載部分(販売店名、頭金、残金、分割手数料等)があり、更に乙三号証の記載内容が甲一号証において訂正されている記載部分(勤続年数、商品名)も認められ、以上乙号各証の記載と相異する甲号各証の記載部分について、Yらはその成立を否認し、他にこれを認めるに足る証拠はないから、右相異部分の記載は真正に成立したものとは認められず、何者か(証拠並びに弁論の全趣旨を総合するとBと推認される)が冒書したものと推認され、右冒書部分を除いた甲一、四号証の記載によっては本件契約の基礎をなす売買契約の存在は認められない。

2 証人Iの証言によれば、同人は、Bに依頼されたとおり、Bが主催する「ブライダルインN」に対する月掛の積立契約をYらに勧誘し、同人らがこれに応じて各一口(金額三五万円)の申込をしたので、Bの指示どおり右月掛積立金の支払のために、Bから預かったX会社発行のクレジット契約用紙に、Yらの署名、捺印を求めた事実は認められるものの、X主張にかかるAとの間の売買契約の話が、当日当事者間においてなされた事実は認められず、I及びYらはAの存在すら認識していなかった事実が認められる。

3 右認定のとおり、YらとAとの間の売買契約は架空のもので、不存在である事実が明白であるが、そうであるとすれば本件立替払契約も不成立と認めるのが相当である。立替払契約とは、当該成立した売買契約の売買代金を立替えて支払う為の契約であることは論を要しないところで、両契約は主と従、目的と手段の関係にあり、両者は相互に無関係には存在し得ないものである。本件のごとく売買契約が存在していない場合は、これを前提とする立替払契約も成立しないものと解するのが相当である。

4 なお、証人Hの証言、Y2の供述によれば、X会社の契約意思確認の電話に対し、Y2がこれを肯定するような回答をした事実が認められるが、右確認電話の内容については疑問が残るのみならず、証人Iの証言によれば、クレジット契約に対するI並びにYらの無知に乗じたBの詐欺的な誤導により、錯誤に陥っていたものと認められるY2が、同人の供述によれば、右確認の電話に対し、単に肯定のみの回答に終始した状況が窺われ、従って右Y2の回答をもって、前記架空の売買契約を改めて追認したものとは到底認め難く、他に右認定に反する証拠はない。」

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!